ハージェント家の天使

絡み合う手

「ニコラ」
 ヴィオーラとリュドと話した日の夜。
 モニカの腕の中のニコラに声を掛けた。
 ニコラはじっとモニカを見つめてきたのだった。
 最近では授乳の時間も安定して、離乳食も問題なく食べていた。
 最初に出会った頃より、身体も大きくなってきた。
 薄っすらと生えていたモニカと同じ色の髪も、今では量が増えてきたのだった。

「ニコラは、マキウス様が好き?」
 ニコラはただモニカをじっと見つめていた。
「私はマキウス様が好き。好きなの」
 マキウスの事を考えると、胸がバクバクと大きな音を立てた。
「こんな風に今まで誰かを好きになった事は無いの。これまでは」
 モニカは腕につけている魔法石のブレスレットをじっと見つめた。腕の中のニコラに視線を戻すと、微笑んだのだった。
「きっと、これから先。もし、マキウス様以外の男性と出会えても、マキウス様以上に愛せない気がするの。それだけ、私の中でマキウス様の存在が大きいの」
 もう、マキウス以外の男性を愛する事は出来ない。
 モニカの中で、マキウスの存在はとてつもないくらい大きくなっていたのだった。
「だから、決めたんだ。これから先、マキウス様の身に何があっても、一生ついて行く。その時はニコラも一緒に来てくれる?」
 自分の名前に反応したニコラは、またモニカを見つめた。
 そうして、モニカに向かって笑いかけたのだった。

「随分といじらしい事を言ってくれるんですね」
「マキウス様!?」

 いつの間にか、部屋の扉が開いていた。
 部屋着に着替えたマキウスは、2人の側までやってきたのだった。

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