ハージェント家の天使
「そうして」と御國は唇を噛んだ。

 これを言ってしまったら、後戻りが出来ないような気がした。

 けれども、今これを言わなかったら、きっと後悔すると御國は思ったのだった。

 また、頭が痛み出した。今度はじわじわと痛みが強くなってきた。
 早く言わなければ、と御國は内心で焦った。
 痛みが頂点に達したら、言えなくなってしまいそうだった。
 御國はマキウスに痛みを悟られないように、微笑んだのだった。

「2つ目。私がマキウス様を幸せにする事を。
 マキウス様に与えられてばかりでは、なんだか悔しいですし、心苦しいです。
 だから、マキウス様が私とニコラを幸せにしてくれるように、私がマキウス様を幸せにします。1人の女性として、妻として」

「それは……」
 痛みが限界に達しそうだった。
 目を大きく見開くマキウスに、御國は目尻に涙を溜めながら微笑み続けた。

「私は貴方の傍に居たい。その為に、私はモニカになります。モニカとして、この世界で生きていきます!」

 御國は頭が焼き切れるような強烈な痛みを感じた。
「だ、だ……から、わ、私を、傍に、いさせて、ください……」
「モニカ!」
 御國は頭を抱えてベッドに倒れ込んだ。
 全身から汗がビッショリと出てきた。
 マキウスが何かを叫んでいるが、御國の頭の中には入ってこなかった。

 御國はそこで意識を失ったのだった。
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