ハージェント家の天使
「ところで、魔力と魔法、そして魔法石が何か知っていますか?」
 モニカが首を振ると、マキウスは教えてくれたのだった。

 魔力は指紋と同じように、1人ずつ僅かに違っているらしい。
 カーネ族は生まれつき魔力を持っているが、同じ家族でも魔力は少しずつ違う。
 鍵を始めとする一部の道具は、この魔力を認識して使用する。

 魔法は魔力を糧として、振るう力である。
 魔力の持ち主が思い描いた力や願いを、魔力を捧げる事で魔法として叶える事が出来る。
 ただし大きな願いほど、魔力は必要になる。
 国を滅ぼす事や大量殺人を行うなど、自分の魔力を超える力を振るう事や、願いを叶える事は出来ない。
 また、魔力は生命力と直結している。
 魔力を使い過ぎると、命を落としてしまう事もあるらしい。

 魔力を魔法として普段から使えるようになる者は、ごく一部の魔力が強い者か、魔法が使えるように訓練をした者だけである。
 ほとんどのカーネ族は、魔力を道具の認識に使用するだけで終わるらしい。

 魔法石は魔力が少ない者や持たない者を補う謂わばマジックアイテムである。
 魔法石が認識した者の魔力を魔法石に宿し、魔法石の持ち主の願いを叶える。
 そうして、魔法石に宿った魔力が無くなったら、また魔法石が認識した者から魔力をもらう……。といった事を、魔法石の寿命がくるまで繰り返すのだった。

「マキウス様も魔法は使えるんですか?」
「私は使えません」
「そうなんですね……」
 モニカは落胆するが、「ですが」とマキウスは続けた。
「近年、魔力の強い者が増えてきています。調べたところ、魔力が強い者の殆どはカーネ族とユマン族の間に生まれた者か、ユマン族の血を引く者が多いらしいです」

 魔法が使える者は、王宮直属の王宮魔法使いとして、国から重宝される。
 王宮魔法使いは、主に国の中心部にある大天使像の管理を命じられる。国を運営する大きな役割を担っているとの事で、王宮魔法使いは名誉職と言われていた。
 近年、王宮魔法使いが増加の一途を辿っていた。
 王宮魔法使いの長達が調べたところ、近年、王宮魔法使いとなった者の殆どが、自分の親や祖先にユマン族がいる者達だった。
 どういった原理で、ユマン族の血を引く者達が、生まれながらに高い魔力を持つのかはわからない。
 本来なら、ユマン族は魔力を持たない筈だからだ。
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