ハージェント家の天使
「ペルラから聞いています。マキウスの屋敷でしっかりやっていると」
「ありがとうございます!」
「たまには我が家にも来て下さいね。アガタとセルボーンも会いたがっていました」
 元々はペルラとペルラの夫のセルボーン、アマンテとアガタの一家は、代々ブーゲンビリア侯爵家に仕えている使用人一族らしい。
 マキウスが王都に戻り、更にモニカが妊娠した事を機に、育児経験のあるペルラと、乳母として適任であったアマンテを、ヴィオーラが屋敷に寄越してくれたらしい。
 それ以外でも、ティカやエクレアなどの使用人はヴィオーラが選んでくれたとの事だった。

「……ありがとうございます。ヴィオーラ様。近々、妹と父に会いに行きたく思います」
「ええ。お待ちしています。その、腕に抱いている子が?」
 ヴィオーラがモニカに視線を移すと、モニカは頷いた。
「はい。ヴィオーラ様。この子がニコラです」
 アマンテから受け取ったニコラは、ヴィオーラをじっと眺めていたのだった。

「ヴィオーラ様、ニコラを抱いてみませんか?」
「よろしいのですか?」
「はい! 勿論です!」
 モニカがニコラを差し出すと、ヴィオーラはおっかなびっくり受け取った。
 まるで、剣を受け取るかのようにニコラを受け取ったヴィオーラだが、抱き方がわからないのかニコラが安定しなかった。
 ヴィオーラはアマンテに教えてもらいながら、ニコラを抱いたのだった。
「可愛いものですね」
「そうですよね!」
 ヴィオーラはニコラに笑いかけたのだった。

 どうやら、ニコラは人見知りをあまりしないようで、モニカやアマンテ以外が抱いても泣く事が少なかった。
 暴れないのはいいのだが、人見知りしないのは、それはそれで不安になるのだった。
 未だにヴィオーラをじっと見つめるニコラを微笑ましく思いながら、モニカはアマンテに目配せをした。
 すると、アマンテはそっと部屋を出たのだった。

「赤子はこんなに温かいのですね。私は赤子を抱いた事が無いのです」
 ヴィオーラとアマンテは同い年、アガタはヴィオーラより1歳下で、マキウスは更にその下になるらしい。
 4人が子供の頃はよく遊んでおり、実の姉弟のように仲良しだった。
「私達4人はいつも一緒にいました。私がマキウスを連れて来て、アガタがアマンテを呼んで」
「そうだったんですね」
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