ハージェント家の天使

　ヴィオーラからニコラを受け取ったモニカは、膝の上にニコラを座らせた。
　最近は、支えるとニコラも座れるようになってきたのだった。
　ヴィオーラは紅茶に口をつけた。
「マキウスから見たら、姉が3人いたように思えたのでしょう。特にマキウスはアガタに振り回されていましたから」
「私を1番振り回していたのは、貴女でしょう」
　部屋に入って来ながら答えたのは、マキウスだった。

「マキウス様」
「マキウス」
　マキウスは呆れた顔をしながら、2人の元にやってきたのだった。
「全く。モニカに呼ばれたから来てみれば、人の話で盛り上がっていたんですね」
　マキウスの後ろから入ってきたアマンテが引いた椅子に、マキウスは座った。
「マキウス、そのような言い方は……」
「違いますか？」
　マキウスの態度にヴィオーラは「全く」とため息を吐いたのだった。
　険悪な雰囲気になりかけたモニカは、「それにしても」と2人を眺めたのだった。
「こうして並ぶと、おふたり共、とてもそっくりです。さすが姉弟ですね！」
　たまたま、マキウスもヴィオーラと似たような服装だったからモニカは言ったのだが、その言葉に2人は衝撃を受けたようだった。
「なっ！？」
「それは……」

「そうですよ〜！ ね？ ニコラ？」
　モニカがニコラを見下ろすと、モニカはギョッとしたのだった。
「ニコラ！？」
　ニコラの口の周りが、濡れていたのだった。
「あらあら」
「やれやれ」
　ヴィオーラがクスリと笑う中、マキウスに口の周りを拭いてもらうと、ニコラは喜んだのだった。
「もう……。そろそろ離乳食を始めてもいい頃なのかな」
「そうなのですか？」
　赤子が離乳食を始める時期の見極め方の１つに、食べている人をじっと見て、ヨダレを垂らすというのがあった。

「ええ、そうなんです。それになんだか、ニコラが妙に温かいような……？」
「モニカ様、失礼しますね」
　アマンテがそっとニコラに近づいてニコラに触れた。抱き上げると、身体をよく確認した。そして、お尻を触ると「ああ」と得心したようだった。
「ニコラ様のお召し物を替えてきますね」
「じゃあ、私も」
「モニカ！？」

　モニカが席を立つと、マキウスも席を立とうとしたのだった。
「マキウス様はヴィオーラ様とゆっくり話して下さい」
　モニカはマキウスに近づくと、ヴィオーラに聞かれないように呟いた。