ハージェント家の天使
 入り口から4段ほどの階段を降りると、パワーストーンのアクセサリーコーナーとなっていたのだった。

 2人が店内に入ると、他に誰も客はいないようだった。
 モニカは迷わずパワーストーンのコーナーに向かったのだった。
「これは、宝石ですか?」
 マキウスは透明の石を手に取ると、光に透かせながら呟いた。
「宝石とはまた違うと思いますよ。パワーストーンなので」
 モニカは答えながら、パワーストーンに視線を移した。
 桃色や黄色、白色、紫色、水色など、様々な色のパワーストーンが並べられていた。
 その中央には、パワーストーンのピアスやイヤリング、ネックレスが売られていたのだった。
「どれも素敵ですよね。欲しくなります」

 モニカがパワーストーンのアクセサリーを眺めていると、「ああ、そういえば」とマキウスは思いついたようだった。
「そういえば、モニカにはまだ結婚指輪を渡していませんでしたね」
「結婚指輪って……。魔法石の指輪の事では無いんですか?」
 モニカが左手の指にはめていた魔法石の指輪を眺めていると、マキウスは首を振ったのだった。
「それとは別に、指輪を贈ろうと思っていたんです。その……。魔法石の指輪で結婚指輪の費用がほぼなくなってしまったので、まだ考えている最中でしたが」
 どうやら、モニカに魔法石の指輪を用意する際に、用意していた結婚指輪の費用を使ってしまったらしい。ーーそれでも足りない分はヴィオーラが出してくれたらしいが。
 モニカは嬉しいような、悪い事をしてしまったような、そんな気持ちになったのだった。

「でも、それならいいです。無理して用意をしなくても」
「いいえ。妻に恥ずかしい思いはさせられません。そのような事をさせたら、私が姉上に叱られます」
 マキウスはヴィオーラに怒られる事を想像したのか、青い顔をしていたのだった。
「じゃあ、指輪はまた別の機会に考えましょう。今は個人的に欲しいアクセサリーを見たいです」
 モニカ達がパワーストーンのアクセサリーを眺めていると、茶髪の若い女性店員が近づいてきたのだった。

「何かお探しですか?」
「探しているというわけでは無いんですが……」
 モニカが答えに窮していると、何かを察したのか女性店員は「ああ!」と声を上げたのだった。
「恋人さんにプレゼントですか?」
「いいえ。恋人ではなく夫婦です」
< 89 / 166 >

この作品をシェア

pagetop