パラダイス、虹を見て。
 アラレさんからツナギと麦わら帽子を貸してもらい。
 その日のうちから、畑仕事を手伝うことにした。
 畑を耕したり、草むしりをしたり。
 水やりをしたり…
 久しぶりの畑仕事がこんなにも楽しいとは思わなかった。

 日中は畑仕事に勤しみ、
 夜はアラレさんとヒサメさんの3人で夕飯を食べる。
 そんなサイクルが一週間続いた。

 その一週間で。
 この「秘密の館」と言われる住人の秘密をちょっとだけ理解した。
「もとは、この屋敷はね。ユキとヒョウの2人が住む家だったんだ」
 と草をむしりながら、アラレさんが説明してくれた。
「ユキはね、とある国の王子様って話で。でも、本当かどうかはわからないらしいよ」
 アラレさんの話は、わかるようでわからない。
 どこか曖昧な表現に「本当ですか?」と突っ込みたくなるところが幾つかあった。

 アラレさん曰く。
 ユキさんは、とある国の王子だったけど。
 人質としてティルレット王国にやってきて。(人質って本当にいるのかと、そこはアラレさんの言葉を疑ったけど)
 王様に「戻っていいよ」と言われたけど。
 ティルレット王国をすっかりと気にいってしまい、何故か帰国せずに此処に残ってしまったらしい。
 ユキさんと顔見知りだったヒョウさんが、ユキさんの面倒を見るために屋敷を建ててあげて。ついでにヒョウさんも一緒に住むようになったとか。

 で、ユキさんやヒョウさんの知り合いやお友達の何人かが、この屋敷で暮らしたりまた離れていったりするのが、この屋敷だという。
 現在、暮らしているのは。
 ヒョウさん、ユキさん、アラレさん、ヒサメさん。
 そして、
「サブキャラ的な感じでもう一人いるんだけどねー。月に1・2度しか現れないのよソイツ」
 と面倒臭そうにアラレさんが説明する。
「あの、イナズマさんは暮らしてないんですか?」
「ああ、アイツ? たまに泊まるけど。ここには住んでないよ」
 ポイッとアラレさんは雑草を投げた。

 お手伝いさんを含め、全員男。
 女性禁制だったことから「秘密の館」だなんて呼び名が付いたらしい。
「女性が住めないのは、ヒサメさんが女嫌いだからですか?」
 すっかり安心しきって質問すると。
 アラレさんは「うーん」と考え込んだ。
 ずっとしゃがみ込んでいると疲れるので、立ち上がってストレッチをする。
「ヒサメのこともあるけど・・・うーん…」
 なんとも歯切れの悪い返事しか返ってこなかったので。
 その時は話題を変えた。
 人それぞれ、抱えているものだってあるだろうし、秘密だってあるものだ。
< 19 / 130 >

この作品をシェア

pagetop