パラダイス、虹を見て。
「ただいま」
 モヤさんは馬を連れて行ってしまったので。
 一人、館の扉を開けた。
「あー、もう疲れた」
 と言って、頭に巻いていたスカーフを取る。
 今日ばかりは与えられた情報量が多すぎて疲れた。
 楽しかったのは事実なのに…。

 はああ…とため息をつくと。
「なんなの、その髪型!?」
 というサクラの悲鳴が聞こえた。
 階段を一気に駆け下りたサクラは。
 私の前に立った。
「何で、そんな男みたいに短く切ってるのよ」
 顔を真っ赤にして言うサクラに、「あぁぁ」と声を漏らす。
「せっかく、女に生まれたのに。何してんのよ」
「サクラちゃん。これが私らしさなんだよ」
 サクラの頭をぽんぽんっと撫でた。
「貴族の娘らしいとか、女性らしいとか。そんなふうに見られるのが嫌なだけ」
「だからって。そんな短くすることないじゃない」
 涙目で言うので。
「結構、気に入ってるから平気」
 と笑った。
 よっぽどサクラの声が大きかったのか。
「どうした?」
 と言って、2階からヒョウさんが出てきた。
 階段を降りて。
 私の顔を見た瞬間。
 その場に固まってしまった。
「ヒョウさん、カスミさんがこんなに髪の毛切っちゃってるんですよ」
 助けを求めるかのように、サクラが叫んだ。
「まあ・・・似合ってるんじゃないか」
 口角をひくひくさせながら、ヒョウさんが言った。
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