カラフル☆デイズ

深月先輩からは何も返ってこなかったけれど、一瞬顔を見れただけでも満足で、自然と緩む口元を必死に固く引き結ぶ。


「何で、アイツに挨拶してんだよ」


思いっきり不機嫌さを露わにするセイ兄は、歩く歩調まで心なしか速まっている。


「だって、一応先輩なんだし無視するのはよくないでしょう?」


「別にまひるとは関わりのないヤツなんだし、これからはシカトでいいから」


「……セイ兄と仲が悪いの?」


「仲が悪いっていうか、嫌い」


どうして?って訊きたかったけれど、嫌いと言ったセイ兄の口調からは、もはや嫌悪感どころか、感情の片鱗(へんりん)すら見えなくて。


そんな、いつもとは違うセイ兄の雰囲気に呑まれて、それ以上訊くことが出来なかった。


< 164 / 420 >

この作品をシェア

pagetop