犬と車椅子と
その日は生まれて初めてケーキを買った。
イチゴのショートケーキを二つと犬用のケーキも売ってあったのでそいつもついでに買う。
その日はとても晴れていた。
青空の下、あの古ぼけたベンチで二人と一匹でケーキを食べるのもいいと思った。
犬はビニール袋に入ったケーキの匂いを察してシッポを振る。
こいつがいなければ彼女と出会う事もなかったんだよな。
「まぁ待てよ」と言ってポンっと犬の頭を叩く。
彼女に会いたくて早足で病院の敷地に向かう。
この時に俺は彼女に告白しようと決めた。
「俺は君が好きだ」
ただそれだけ言おうと決心した。
しかし彼女の姿はどこにもなかった。
広大な大学病院の敷地探したがどこにもいなかった。
ベンチに座り彼女を待ち続けた。
ジリジリと太陽が俺を焦らせる。
缶コーヒー3本とタバコを一箱吸ったが彼女は来なかった。
隣に置いたケーキの箱がむなしかった。
太陽が落ちる。俺はゴミ箱にケーキを投げつけた。

その日から禁煙する事にした。
今度、タバコを吸うのは彼女に会った時と決めたから。
そして俺と犬は今でも彼女を待ち続けている。
彼女と約束したから。





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