秒速ファシネイト
一緒に帰った日
「そんなこと言ったって…どうやって虜にするつもり?
麗美恋愛経験ゼロじゃん」
学校一の美少女の私が特に何の変哲もない男子、一条凪を落とす宣言したことはもう学校中の噂になっているらしい。
いつも以上に視線が注がれている教室で、そうバッサリ私を斬ったのは親友で幼なじみの上矢真子。
たぶん全校生徒から恋愛経験がさぞかし豊富と思われている私だけど、真子だけは知っている。
彼氏どころか初恋も未経験だったことを…。
「べっ、別に恋愛経験ゼロとか関係ないし。だってこの私だよ?私に落ちない男とかいるはずないし」
「それにしても一条凪かぁ…なかなかマニアックなところいったよね」
少し離れた席で読書している一条凪に視線をやる真子。
「テストでは学年一位だけどそれ以外目立つところ特になくない?
何考えてるかイマイチわかんないしさー…」
「でも私に興味ないことだけは分かる」
だってあんなにゾクゾクとした冷たい瞳、はじめてだった。
思い出すだけで心臓がわずかに軋む。
「この木村麗美の腕が鳴るわ!」