昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
 小声で注意して、しばらくジッと藪を見ていると、黄緑色の小さな光がふたつ見えた。その光は静止せず、蝶が舞うようにゆっくり動いている。
「これ……ホタル?」
 興奮した様子の彼女に笑顔で返事をする。
「そう。うちの自慢だ」
「幻想的で綺麗。小さい頃、どこか河原で見た記憶はあるんですけど、大人になってからは初めてです。鷹政さん、ありがとう」
 凛が俺の方を見て嬉しそうに礼を言ったその時、無数の光が目の前に広がった。
「見てご覧。日頃の凛の行いがいいから、いっぱいやってきた。まるで凛に挨拶しに来たみたいだ」
 俺たちの周りを舞うように飛ぶホタル。
 神秘的な光を見ていると心が浄化されるような気がする。
「いいえ。やっぱり鷹政さんが天使だからです。初めて会った時、鷹政さんがこんな風に輝いて見えました」
 凛はクスッと笑って茶目っ気たっぷりに言う。
「凛と同じ人間なのにな。今思うと、十五年前のあの時、凛をさらえばよかった」
 
< 194 / 260 >

この作品をシェア

pagetop