昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
「よかった」
 にっこりと笑って私もお弁当を食べ始める。
 なにかしゃべろうと思っても言葉が出てこない。
 私のお弁当で喜んでもらえた。
 たったそれだけのことがとても嬉しくて……。
 ポタッと大粒の涙が手の甲に落ちる。それから雨のように涙が落ちてきて、もう自分でもコントロールできなくなった。
「あれ……なんで?」
 目を擦るが涙は止まらない。
 私の異変に気付いた森田さんが「どうした?」と問いかけるが、すぐに答えられなかった。
 泣きじゃくる私の肩に手を置き、彼は自分の胸に引き寄せる。
 しばらく彼の胸で泣いてしまったが、ここが会社ということを思い出して慌てて彼から離れた。
「ご、ごめんなさい。あんまり褒めてくれる人がいないから感動しちゃって」
 涙を拭いながらヘラッと笑って見せたが、彼は不審な顔をする。
「本当にそれだけか?」
「はい」と顔を上げて返事をしたら、彼と目が合った。
「その頬、どうした?」
 彼に指摘され、咄嗟に頬を手で隠す。
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