昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
「髪……」
 私の変化に気付きボソッと呟く彼に説明した。
「たまには下ろすのもいいかと思いまして。お弁当作ってきたんです。食べませんか?」
「ああ。ありがとう」
 森田さんが席に着くと、お茶を準備して彼と私の机の上にお弁当を広げる。
「はい、これ森田さんの分です。今日は豚肉巻きおにぎりにしてみました。やっぱり男の人はお肉がいいですよね。あと、焼きトマトに絹さやを入れてみました。あっ、好き嫌いないですか?」
 機関銃のようにしゃべる私の質問に森田さんは「ない」と端的に答える。
 その返答にホッとした。
 彼は礼儀正しくいただきますをして食べ始めた。
 なんというか所作が綺麗。
 森田さんの感想が聞きたくてつい彼が食べる様子を見てしまう。
 まず一口サイズのおにぎりを箸で器用に掴んでパクッと口にする彼。
 しばらく咀嚼して私が欲しかった言葉を口にした。
「味が染みてて美味しい。俺好みの味だ」
 言い方は素っ気なかったけど、なんだか胸にジーンときて、目頭が熱くなる。
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