昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
『そんなことを言われたのは初めてだよ、かわいいお嬢さん。でも、残念ながら天使じゃない。君と同じ人間だよ』
 にこやかに否定するが、凛は瞬きもせず俺をジッと見つめている。
 本当に天使だと思っているのだろうか。
 子供ってこんなにピュアなんだな。
 ずっと大人の汚い世界にいたから、子供が純真だってことに改めて気付かされた。
『女の子がこんな時間にひとりでいては危ないよ。僕が送っていってあげる。家はどこかな?』
 彼女に手を差し出すが、断られた。
『いいの。私ずっとここにいる。私は必要とされていないもの』
 また表情を暗くする彼女を見て胸が痛くなる。
『必要とされていない?』
 気になって聞き返すと、凛はか細い声で話し出した。
『お父さまは私のことを疎ましく思っているの。お姉さまと弟のことばかりかわいがって……私のことは全然見てくれない。私は……お父さまにとって……空気みたいなもの……なの』
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