不器用な恋〜独占欲が恋だと知ったのは君のせいだ
主任の作ってくれた朝食は、簡単ながらも美味しいと感じて感想を述べると、にこりと笑い返される。不意打ちのその笑顔にキュンとしごまかすように目を逸らすと、伺うように尋ねてきた。
「さっきの帰れって本気で言ってる?」
「はい…いろいろと家の中のこともしたいですし、その、睡眠もとりたいので」
「…そうだよね。なら、夕方ぐらいなら、出かけれるよね⁈」
「まぁ…たぶん」
「じゃあ、一緒に、夕食を食べに行こう。これは譲れないからね。お隣さんへのお詫びだから、遠慮とかなしだよ」
「…これから気をつけてくれるだけでいいんですけど」
「断るなら、一日中ここに居座るよ」
首を垂れて落ち込んで、すぐに立ち直り、強引な面もみせる主任の表情の変わり具合に、あまりにも可笑しくて笑った。
「…ふふふ。もう、強引ですね」
「…笑った…」
「はい?私だって笑いますよ」
「うん、そうなんだけど…俺の前で笑ってくれたのって初めて」
うっ…確かに、会社では、主任の前では気を張っていて、無理に無表情に徹していた。
「そうでした?」
「そうだよ。如月の笑った顔もっと見せてよ」
指を組んだ手に顎を乗せて、自分の見せ方を知っている男が微笑んだ。