魔王様は攻略中! ~ヒロインに抜擢されましたが、戦闘力と恋愛力は別のようです

 どこに隠していたのやら。やおら皿を取り出したキャロラインは、被せられていたドームをかぱりと外す。きらきら輝くいちごのケーキに、アリギュラは目をきらきらさせたが。

「そ、そんなー!」

 憐れに呻いて、ぱたりと倒れる。今日はまだ、ノルマの半分も進んでいない。この分では、ケーキにありつけるのはいつになるだろう。

 うじうじと嘆くアリギュラを、さすがに不憫に思ったのだろう。頬に手を当てて、キャロラインは悩ましげに嘆息した。

「困りましたわ。こういうとき、あの方がいてくださると助かるのですが……」

 ぴくりと。机に突っ伏したまま、アリギュラは身じろぎした。途端にキャロラインは、慌てて両手で口を覆った。

「も、申し訳ありませんわ! 私ったら……こんなことを言って、一番辛いのはアリギュラ様のはずなのに」

「おいで、キャシー。自分を責めてはいけないよ」

 眉を八の字にして、ジーク王子がキャロラインの肩に手を置く。そうして婚約者を落ちつけながら、どこか寂しげに王子は視線を落とした。

「私たちも同じ気持ちだよ。ふとした瞬間、()がいてくれたらどんなに頼りになっただろうと思ってしまうんだ。こんなこと、言っても仕方ないことなのにね」

「ジーク様……」

「キャシー……」

 声を詰まらせるキャロラインに、ジーク王子がそっと腕を回す。悲しげな婚約者を、王子がひしと抱きしめたその時だった。
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