魔王様は攻略中! ~ヒロインに抜擢されましたが、戦闘力と恋愛力は別のようです

「よかったですわ……。私、一度の心変わりを笑って許せないなんて、なんて狭量な女なのだろうと。時々、そんな不安に駆られていたのですわ」

「そんなわけあるか! して、相手の女はどんな奴なのだ? おぬしの婚約者とは、いったいどこまで進んでいる?」

 相手の女をせん滅するつもりで、アリギュラは問いかける。どんな形であれ、それが戦であるならば、物をいうのは情報量だ。アリギュラはこの娘の同志として、娘の婚約者がうつつを抜かしているという女について知らねばならない。

 すると、娘は頬に手をあてて首を振った。

「私も、お会いしたことはないんです。それに調べた限り、私の婚約者様の想いは一方的な片想いで、具体的に何かしでかしたわけではないんですの」

「なんだ。その程度か」

「ですが! 婚約者様ったら、ひどいんですのよ!」

 拍子抜けするアリギュラであったが、娘はくわりと目を見開いた。

「ここ最近は私と会っていても、ずーっと上の空! そのくせ、口を開けば相手の女性のことばかり!! しかも聞けば、相手の方は既にパートナーがいるというではないですか! こんな屈辱があります!? 婚約者の私を差し置いて、敵わない片想いに胸を焦がすだなんて。浮気のほうがまだよかったですわ!」
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