Dear my star


「ごめ……っ!あれ、なんで。おかしいな」


慌てて顔を隠そうとするとその腕を掴まれた。

そのまま強く手を引かれて、郁ちゃんに抱きしめられる。


「おかしくないよ。辛いことがあれば、涙がでるのは当然だよ」


郁ちゃんの温かさがじんわりと胸の中に拡がって、最近うんと弱くなった涙腺をまた刺激する。


「真佳、この頃どうしたの? 長谷川先輩も真佳も、神崎先輩が帰ってきたのに全然その話をしないんだもん。真佳、気づいてる? いつも廊下を歩く時、真佳は誰かを探してるよ」


あれ、おかしいな。

探そうとなんて、していないはずだったのに。

なんで、なんで今更。今更探したところで、会って話ができる訳でもないのに。


でも、廊下に出れば後ろ姿を探してしまう。

同じ背丈の人がいれば振り返ってしまう。

ふと声が聞こえたような気がさて、来た道を走って戻ってしまう。


意識しないようにしているはずなのに、どうしてもその姿を探してしまう。


「真佳が話してくれるまで待とうと思ったけど……でもこんな真佳を傍で見てるの、苦しいよ。ねえ真佳、神崎先輩と何があったの……?」



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