義理のお兄ちゃんの学園プリンスに愛されちゃってます~たくさんの好きをあなたに~
「たくさん食べてるか?」
 お邪魔していいか? なんて言いながら、渉は梓たちやほかの後輩女子がいたところへ入ってきてしまった。声までかけてくれる。
 本人に聞こえないなら、きゃぁっと沸いた声がするだろうほど、その場は一気に明るくなった。
「うん! とってもおいしいから」
「バーベキューなんてなかなかしないからなぁ」
 梓はどきどきしながらも答えた。お肉や野菜がおいしいのも本当だけど。
渉はにこっとして、「ん? 肉が足りなくないか?」と、焼く前の食材が並べられているところを見て言った。
 それには数名の女子が反応する。
「わ、私っ、取ってきますね!」
「私もっ」
 ぱたぱたと駆けていく。梓には小さく「小鳥遊先輩が来てくれたぁ!」「お話しちゃったっ」とかわいらしい声と言葉が交わされるのが聞こえてきた。
 渉のことをすごい、と思う。あのまま話していても良かっただろうに、ここへわざわざ来てくれたのは、後輩の子たちが仲間に入りたそうにしていたからだろう。ある意味、学園の王子様として周りを気遣った行動である。
「たっ小鳥遊先輩! そのっ、せっかくですから、これ……」
 どもりながら、顔を赤くしながら紙皿を差し出したのは雲雀である。雲雀にとってだって、降ってわいたラッキーに決まっている。
 渉はにこっとして、雲雀の手から紙皿を受け取った。
「ありがとう。せっかくだから少しいただいていくな」
「あっじゃあこれも!」
 隣からほかの子が、割りばしを差し出した。渉はそれも「ありがとう」と受け取る。
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