義理のお兄ちゃんの学園プリンスに愛されちゃってます~たくさんの好きをあなたに~
「私、部活に入ってないから生徒会の仕事がちゃんとできます!」
「部活くらいやってたって働けるわよ。むしろ部活を頑張ってる子のほうが先輩も、……いえ、なんでもないわ。両立できるほうがえらいと思うな」
「そんなことないよ、私は中等部でも役員をやってたんだから、その経験のほうが……」
 わいわいがやがやと、それぞれ選ばれるべき理由を並べ立てる。収集がつかない。
 特に白熱していた子たちがにらみ合いになりそうになったときだった。
 ぱんぱん、と誰かが手を叩いた。
 みんなが静かになってそちらを見る。手を叩いたのは、クラスの副委員長だった。
「こんな言い合っててもなにも進まないだろ。公平にくじで決めないか」
 ごくまっとうなことを言った。女子たちは顔を見合わせたけれど、ここで「嫌」だというのも性格が悪いことだ。
 運も実力のうちだ。ちょっと不満そうな空気は漂ったものの、くじを作ることになった。
 前の席に座っていた子たちが手伝って、くじを作っていく。くじといっても簡単なものだ。
 一枚の紙に『アタリ』と書く。男子と女子、それぞれ一枚ずつ。
 そのほかの紙は白紙。全部合わせてクラスの人数になるように。
 紙を切って、半分に折って人数分作って、男女それぞれ、適当な箱に入れた。ティッシュの空き箱だった。
 そんな簡易なくじが完成した。みんな前に行って、一枚ずつ引くのだ。
 ……みんな?
 梓はちょっと疑問を覚えた。つまり自分も引くということだ。特に役員になりたいわけでもないのに。
 それどころか役員はちょっと面倒だと思っていた。余計な仕事はしょいこみたくない。
 だから、やりたい子だけ引けばよかったのではないだろうか。そんなふうに思った。
 でも作ってしまったのだから辞退するわけにもいかない。一応、クラスの仕事なのだ。やりたいやりたくないはともかく、やる義務は一応なくもない。振り当てられるのだったら、嫌とは言えない仕事なのだから。
 それにあたるはずがないではないか。梓は自分に言い聞かせた。
 女子だけでも十五人いるのだ。その中からアタリなんて。単純に1/15。確率はかなり低い。
 しかしながら、運命のいたずらとは皮肉なものである。梓が適当にティッシュ箱の中から掴み出した一枚の紙。
 それには赤いペンでしっかりと『アタリ!』と書いてあったのである。
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