義理のお兄ちゃんの学園プリンスに愛されちゃってます~たくさんの好きをあなたに~
 でも、どうして?
 そう聞きたかった。けれどどう言っていいものか。
 そこで止まってしまった梓に、渉はまたちょっと微笑んだ。やはり困ったような笑みだった。
「いとこなんて紹介して、失礼だったよな」
「……ううん」
 本題に入ったけれど、梓はやはり首を振るしかなかったのであった。
「本当は妹だって言うべきだったんだけど……ちょっとやっかいなことになりそうでさ」
「やっかい?」
 聞き返してしまった。やっかいなことになるとはどのようなことか。
 梓の疑問に、渉は順を追って話してくれた。
「妹だって言ったら、嫉妬を買うかもしれないと思ったんだ」
 嫉妬。
 いったい誰が嫉妬するのか、と思ったけれど、次の言葉に思い当たった。
「その……女子とかが。俺とお前は、兄妹だけど血は繋がっていないだろ。だから、いきなり親の再婚で、他人が妹になりました、なんていうのを知ったら……変なふうにやっかむひとが出てくるかもしれない」
 違う意味でなにも言えなくなってしまった。渉ははっきり言わなかったけれど、理解したので。
 渉は学園の王子様だ。女子に非常に人気がある。
 その渉の妹になる、というか、なれた、というのはある意味非常にラッキーで……できるなら自分がそうなりたかった、と思う女子なんて数人ではないだろう。
 それが『やっかむ』という状態になるのである。
「いとこだって言っても、いきなり一緒に暮らすことになったって事実に嫉妬するひとはいるかもしれないけど……でも、血縁なんだから仕方ないだろって言えば、だいたいのひとはそう思ってくれると思ったんだ」
 理解した。すべて理解した。
 渉は自分を、要らない嫉妬から守るために「いとこだ」と紹介してくれたのだ。
 それは冷たいどころではない。渉の優しさからだったのだ。
 もし嫉妬を買ってしまったら、なにか悪いことが起こったかもしれないではないか。性格の悪い子にいじめられたりとか……そういうことが起こらない可能性なんかない。
 梓の胸が、じんとする。
 嬉しさにだ。そしてそれだけではなく、渉の気持ちを疑うようなことを思った、自分への罪悪感にも、だ。
 渉は自分をちゃんと妹だと思ってくれていたのに。たったひとことで、そうではないのではないかと疑ってしまった。
「だから、お前が妹なのが嫌だとか……そうは思わないでくれ」
 渉が真剣に言ってくれているのが伝わってくる。梓の目をしっかり見て、言ってくれた。
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