義理のお兄ちゃんの学園プリンスに愛されちゃってます~たくさんの好きをあなたに~
 小鳥遊 渉(たかなし わたる)。慶隼(けいしゅん)学園、高等部三年生。
 梓は一年生なので、二才上ということになる。
 そして梓はまだ慶隼学園に入って日が浅いので、これを知ったのはごく最近なのであるが、このハイスペックな見た目と、あとは中身も伴っているので、彼は学園でも非常に人気がある、ありていにいえば王子様のような存在なのであった。
 そんな彼がひょんなことから梓の『お兄ちゃん』になってしまったうえに、一緒に暮らすことになってしまったのだけど……いったいなにがどうしてこうなったか。それよりも今は朝ご飯である。
「はい。ふりかけ、なくなりかけてたから新しいの出した」
 王子様は、ふりかけの話なんかして梓にお茶碗を渡してくれた。ほかほかと炊けた白いご飯。食欲を刺激して、梓のお腹がいきなり、ぐぅっと鳴った。
 一気に恥ずかしくなる。お腹の音なんて聞かれてしまったことに。
 でも渉はなにも気にしなかったらしい。さっさと自分のぶんのお茶碗をテーブルに置いて、席についてしまった。
 なので梓も特になにも言うのはやめておいて、自分の席に着いた。渉の向かいの席にだ。
「いただきます」
「い、いただきますっ」
 渉の挨拶するのに続いて、梓もいただきますを言った。お箸を手に取る。
 そうしてから気付いた。そうだ、ふりかけだった。
 梓は白いご飯は好きだが、ご飯になにかかけて食べるのはもっと好きだった。
 今日のようにふりかけだったり、海苔のつくだにとか、あるいはちょっとしぶくちりめんじゃことか……そういうものが好き。
 渉は、最近ではもうそれをよくわかってくれたらしい。新しいふりかけなんて用意してくれるほどには。
 テーブルのはしにあるケースに立ててあったふりかけを手に取った。新しいふりかけは、たまご味。海苔とゴマが入っている、お気に入りのものだった。
 封は切ってあった。でもまだちっとも減っている様子はない。梓が食べるだろうと思って、封を切っておいてくれたのか。
 そう予想して梓はなんだか嬉しくなってしまった。すごく気の付くひとだ。このお兄ちゃんは。
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