義理のお兄ちゃんの学園プリンスに愛されちゃってます~たくさんの好きをあなたに~
「おはよう……」
 おはようございます、と言いたいのをこらえて普通に言った。はじめの頃は「おはようございます」と言っていたけれど、家族なのに他人行儀だから敬語禁止、ということになってしまった。
 『お兄ちゃん』だけにではない。新しい『家族』全員にだ。
 もちろん、向こうからも同じ。
「ああ、おはよう。ご飯は? 大盛りか?」
「ふ、普通で……」
 でもやっぱりもじもじしてしまう。それはいきなりできた『お兄ちゃん』という存在だけにではない。
 なにしろお兄ちゃんときたら。
 もっと食えばいいのに、なんて言いながら梓のまだ新しいお茶碗を手にしたひと。炊飯器の前に向かった。
 ご飯の大盛りかの質問や、炊飯器や、そういうものが似合わなさ過ぎるひとだ。
 梓は着替えや簡単な身支度などはしたものの、まだ起きたばかりだというのに、彼はもうきっちりと支度を済ませていた。
 緑のチェック柄のパンツ。上はぱりっとしたワイシャツ。ネクタイだけは汚さないようにか、もしくは邪魔になるからだろうか。まだ締めていなかった。
 ついでにジャケットもまだ着ていない。シャツ一枚でももう寒くないのだ。
 五月になって、ゴールデンウィークも終わったのだから当然かもしれないが。ここしばらくは、もう暑いといえる日もちらほらある。
 そんな軽装ではあるものの、きっちりと整えられた髪も、眠たげな様子なんてない涼しい目元も、一日の支度はすっかり終わっていると告げていた。
 焦げ茶の髪は短めで、前髪を横に流していてすっきりとした印象だ。
 目はすっと切れ長でクールに見える。
 おまけに背が高い。梓より高いのは当たり前であるし、クラスでも背の順に並ぶとうしろのほうだと言っていた。
 さらに体型だって整っていた。運動をしているので適度に筋肉がついていて、でも細身ですらっとしている。
 つまり、……とてもカッコいいのだ。梓の『お兄ちゃん』になったこのひとは。
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