義理のお兄ちゃんの学園プリンスに愛されちゃってます~たくさんの好きをあなたに~
「けど、なんかすごくお前に似合ってるな。甘いだけじゃなくて、なんていうのかな……凛としてるというか」
「……えっ?」
 今度はまたしても違う意味で、きょとんとしてしまう。
 凛としている、という言葉の意味は知っている。きりっとしていてクール、とかそういう意味だ。簡単に言えば。
 でも自分がそういうものに該当するとは思わなかったのだ。
 どちらかというと、ピンク色やキャラクターものが好きであるし……クールとは程遠いと思うのだが。
「そ、そんなことないよ! そういうキャラじゃないし……」
 慌てて言ったのだけど、渉は首を振る。
「キャラとかいうより、姿勢がだよ。確かに女の子らしいものが好きだなって思うし……この部屋もそういう感じだし。でも、こうしてテストに真面目に取り組んだり、実際に成績をあげてくるようなパワーもあるし……そういうところが、すごくこの香りに合ってると思うんだ」
 そんなふうにいくつも挙げられて、くすぐったくなってしまう。
 こんな褒められ方をされたことはなかった。
 服装や髪型を頑張っているのを、かわいいね、とか友達に言われることは良くある。女子同士で褒め合うものというのもあるけれど、まるでお世辞ではないと思う。
 けれどそういうものとは少し違うのだ。
 外見ではない。
 中身だ。
 梓の本質だ。
 頑張っているのも、そうしたいと思っている気持ちも。
 そこを評価されたのだ。
 しかも男の子にだ。学園の王子様の渉にそういうふうに評価されるのは、すごいことではないか。
 いや、それともお兄ちゃんだから……家族だから嬉しいのだろうか。
 よくわからなくなったけれど、とにかく、すごく新鮮で、またずいぶんくすぐったい褒められ方であるというのは事実だ。
「も、もったいないよ」
 もじもじと言ったけれど、渉はやはりそれを否定した。
「もったいないもんか。兄として誇らしいよ」
「いや、それはもっと……」
 くすぐったいどころではない。顔が熱くなってしまう。
「ほ、ほら! ごめん、脱線して! えっと、ここの定数? だったよね」
 慌ててノートを指差した梓。渉がしるしをつけてくれたところを指す。
「話をそらすなよ」
 渉はちょっと不満げであったが、すぐに勉強に戻ってくれた。梓はちょっとほっとする。
 嬉しかったけれど、やはりくすぐったい。
 男の子にこんなふうに褒められたのは初めてだった。
 そもそもあまり男子と交流がないので、以前の学校でも今でも、クラスメイトなどの男子に「かわいい」とでも言われたことがない。モテるタイプでもないし、好きなひとがいたことはあっても、彼氏なんてとんでもないし。
 つまり、慣れない。すごくくすぐったいし、恥ずかしくもあるけれど。
 ……とても嬉しいだけでなく、自分に自信が持てるような、誇らしい気持ちになれるような言葉だった。
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