ずっとあなたが好きでした。
「確か、昨日も言われたよな。記憶力が悪いって。」

「あれ?もしかして、自覚ないの?」

「え?ないけどなぁ。
僕、なんか忘れたっけ?」

「それを覚えてないこと自体が、記憶力悪い証拠だよ。」

そう言って、翔子は笑った。



その時、僕はふと頭に浮かんだ質問を声に出していた。



「翔子、誕生日いつだっけ?」

僕の質問に、翔子は突然笑い出した。



「なんだよ。
僕、何かおかしなことでも言ったかい?」

「だって……」

翔子の笑いはなかなか止まらない。
なんで笑われてるかわからず、僕は不貞腐れてピザを頬張った。



「本当に潤って面白い。」

ようやく笑いのおさまった翔子が、コーヒーを一口飲んだ。



「ねぇ、本当に覚えてないの?」

「だから、何を?」

翔子は、もう一口、コーヒーをすする。



「潤が私に誕生日を訊ねたのはこれで何度目かしら?」

「えっ!?どういうこと?」

「もうっ!潤ったら、本当に記憶力悪いんだから!」

翔子は苦笑した。



「だって…本当に覚えてないんだ。」

「だから言ったでしょ?
潤は記憶力が悪いって。」

本当に、僕にはわからなかった。
翔子の言おうとすることに見当すら付かず、僕はさらに焦燥感を募らせた。
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