ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜

 ――ブブブッ、ブブッ

 その時、机の上で携帯が動き出した。

 上向きになっていた画面が目に入ると、表示された名前に鼓動がどんどん速くなる。


 震え続ける携帯。躊躇いながら伸ばした手。

 電話が切れるか切れないかギリギリのところで、私はやっとその携帯を手に取った。


「あ、晴日ちゃん?」

「はい。」

「ごめん、急に。」


 それは、紛れもなく千秋さんの声。

 声が耳に触れるだけで、ギュッと胸が締め付けられる。昨夜のことを思い出すと、余計に顔が熱くなった。


「あの人たち、空港まで見送ってくれたんだってね。ありがと。」


 閉めっきりの室内は、あまりにも静かだった。時計の針が、カチカチと動く音まで聞こえてくる。

 そんな静けさの中でする電話ほど、緊張感のあるものはなかった。


「それと、もうひとつ。」

 すると、そう言って何かを言いかける彼。思わずドキッとして、抱えていたクッションをギュッと抱きしめていた。

「ちゃんと、説明させてほしいんだ。晴日ちゃんが知りたいこと、全部答えるから。」


 私は、その真剣な声を聞いた瞬間、なぜか急に怖くなった。


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