ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜
危うく、コーヒーのカップが手からこぼれ落ちそうになる。
聞いてはいけないことを聞いてしまったと、後悔に手元が震えた。
「彼女、医者でさ。」
それでも、彼は話を続けた。
「私は人の命を救えるんだって、いつも自信満々で。もし自分が死んでも、人を助けられるようになりたいって、......ドナー登録までしてた。」
そう言うと、突然携帯をいじりだす。
不思議に思って見ていると、しばらくして私にその携帯を差し出してきた。恐る恐る受け取り、画面を見ると、ある写真が映し出されていた。
その瞬間、目に写ったものに体が固まる。
どんどん鼓動が速くなり、手で口元を押さえた。
「ヒスイカズラ。」
彼はただそう言って、私の様子をじっと見つめる。
鳥のくちばしのような形をした、エメラルドグリーンの花。滅多に見かけない珍しい花。
しかし、私はそれに見覚えがあった。
「こんなの、俺も初めて見たんだけどさ。あいつ、育て方が難しいんだって言いながら、家の温室ですっごい本気になって育ててた。」
その時、彼と目が合い、体中にゾワッとした感覚が走る。
「それが、突然だったんだ。交通事故に遭って、すぐに手術を受けたけど、もう手遅れで。脳死状態って診断された。」
テーブルの上に置いていた彼の手に、ギュッと力がこもるのが分かった。
見つめていると、辛い表情を抑えるように歯をグッと食いしばり、顔を歪める。それが、余計に見ていられなかった。