ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜
その時、ポケットから取り出した何か。
隣にいた彼が、ゆっくりと動き出す。
身構え、目の前に立った千秋さんを見上げた時、彼は真剣な顔で視線を下ろした。
「もう、こんな気持ちにはならないと思ってた。」
そう言う彼の手にあったもの。
それを見た瞬間、全身に鳥肌が立った。
外から吹き込む寒さに、かじかんだ彼の手が真っ赤になる。ゴツゴツとした長い指が、紫色の光沢ある小さなケースを包み込むと、手を震わしながらパカッと音を立てて開けた。
そこには、見たこともないほどの大きなダイヤモンド。
こちらに向けられたその指輪は、凛と輝いていた。
「6年経っても、彩を忘れることなんてできない。むしろ、忘れちゃいけないって思ってた。」
その瞬間、ちらりと頬に冷たいものが当たった。
指輪を前にそんな思いを打ち明けられ、複雑な感情を抱く私は、その冷たい何かに視線を上げる。
「でも、頭から離れないんだ。彩のことを忘れられないまま、他の人を好きになるなんて、あっちゃいけないって思ってた。でも、晴日ちゃんに気持ちが傾いてる自分がいた。」