ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜

「晴日?」

 しかし、私は玄関先で立ち止まる。

 大理石の白い玄関。そこに、あるはずのない革靴が、一足置かれているのが目に入った。


「礼央、ちょっとここで待ってて。」

 私はドキッとして、慌てて礼央をおいてリビングに急ぐ。バタバタと足音を立てながら、勢いよく扉を開けた。


 すると、キッチンカウンターには、パソコンを開いてこちらを見ている千秋さんが座っていた。突然現れた私に驚いたように、眼鏡をかけた彼と目が合う。

「千秋さん、帰ってたの!?」

「え、あー。ちょっと頭痛いから、家で作業しようと思って......」


 その時、私は忘れていた。好奇心旺盛な小学1年生が、黙って玄関で待っていられるはずがないことを。

「なんで置いてくんだよー!」

 痺れを切らしたように長い廊下を走り、私を抜き去っていく礼央。またもや驚く千秋さんと顔を見合わせ、思わず苦笑いを浮かべていた。


「えっと、晴日ちゃん。そういう大事なことは、結婚前に言うもんじゃない?」

「こいつ誰だぁー!!」


 そして、変な間があいて、2人がそう口を開く。そんな千秋さんと礼央の間に挟まれ、頭を抱えていた。

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