ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜
「ああ、なんだ。双葉ちゃんの。」
「私の子供のはずないじゃないですか......。」
ひとまず、ここにくる前に買っておいたオレンジジュースを渡して、ふてくされている礼央をソファに座らせた。一応、今のところはテレビを見て、大人しくしてくれている。
ちらちらと様子を気にしながら、私は千秋さんの隣に座り、誤解を解くため事情を説明していた。
「あ、でも、私の家でもないのに、勝手に連れてきたことは謝ります。すみません。」
「いや、それは別に気にしてないけど。」
「お仕事してるんですよね。私たちは、お昼食べたら、邪魔にならないように部屋にいますから。」
子供が騒がしくしていたら、仕事になんてなるはずがない。ひたすら申し訳なさを感じながら、急いでお昼を食べて退散しようと思った。
「おいっ。」
その時、私たちの背後から声がした。
椅子ごとくるりと体を回すと、いつの間にかすぐ後ろに立っていた礼央。少し高めの椅子に座っている私たちを必死になって見上げ、腕組みをしている。
そして、とても不機嫌そうな視線は、千秋さんへと向けられていた。
「お前、誰だ!」
「え?」
「晴日と結婚するのは俺なんだぞ!」
今日は、礼央の可愛さにニヤけてばかりいる。
7歳児に、ヤキモチを妬かれてしまった。