恋する乙女はまっしぐら~この恋成就させていただきます!~
無性に甘やかして、可愛がってやりたい気分だったが、車に乗ったところでハッとする。

「くそっっ!何やってんだよ」

そうだった。
これはあくまで "恋人ごっこ" なのだ。

お洒落で女の子が好きそうなレストランに連れて行くつもりでいたが、俺という男を幻滅させるために連れていく場所を思案する。

「デートであそこはさすがにないな」


苦笑いしながら、これから一緒に飯に連れて行く場所を思い浮かべ、さすがに浮かれていた彼女が少し可哀想になり、家に行く前にせめてもと彼女に渡す花を買うために花屋に立ち寄った。

あぁ、そういえば、会うたびに花を贈る約束をしたんだった。


俺はまた、前回と同じように一輪の赤い薔薇に、かすみそうを合わせた小さな花束を注文する。

会計のときに、店員がにこにこしながらこう告げた。

「赤い薔薇の花束を贈るときには、薔薇の本数に意味があるんですよ。
知ってますか?」

知らないと返事をすると、携帯で調べてみてくださいと言われて、1本の薔薇の花束の意味だけ教えてくれた。

"一目惚れ。あなたしかいない"

「あぁ、それならぴったりだ。
僕は彼女に一目惚れしたんですよ」

そう答えて微笑むと、店員さんもにこにこしながら

「それでしたらプロポーズは108本ですね。
本数が本数ですから事前予約が必要ですよ。

きっと彼女喜びますよ。
こんな素敵な方から大きな花束を貰ったら一生心に残るプロポーズですよ。

その時はぜひ、私にその花束をご用意させて下さいね。

御予約お待ちしてますね」

とにっこり笑い、綺麗にラッピングしてくれた花束をさしだした。

受け取った花束をトランクにいれると、『もうすぐ着く』とメッセージを送り、彼女の自宅へ車を走らせた。
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