恋する乙女はまっしぐら~この恋成就させていただきます!~
正直彼女のことは嫌いではない。 

いや、むしろ気に入っているしどちらかはっきりしろというならこの気持ちは好き…にあてはまるのだろう。

ひょんなことから "恋人ごっこ"をすることになり、半年で俺を惚れさせてみせると意気込む彼女は正直可愛くてしかたがない。

すでに俺は彼女に落ちているし好意をもっているが、半年後に落とされたふりをしてみるのも悪くないなという考えが頭をよぎる。

彼女なら、俺のどんなしがらみも障害も、一緒に乗り越えていけるんじゃないかと、諦めていた恋心が彼女をみていると共に歩く未来を想像させる。

だけど…。

甘い夢を見始めた途端、現実をつきつけられた。

昨夜、予期せぬ訪問者に真琴は諦めろとしっかりと釘を刺された。

年内に高宮総合病院に異動して副院長の座につき、同時に総理の孫娘と婚約し、来年中に結婚しろと。


突然現れて、久しぶりに会ったのに頭ごなしに一方的に俺の人生を勝手に決めつける親父に俺は腹が立ち、もちろん反発した。

「勝手に決めるなよっ!」

大声でて怒鳴る俺を横目で見ながら口にした言葉にさらに頭に血がのぼる。

「お前が今付き合っている女性、本多真琴についてはいろいろ調べさせてもらったよ」

「なっ!!!」

「山形の有名な老舗旅館の娘。高宮の嫁としてさほど悪くはないがよくもない。

まぁお前たちを認めても良かったんだが直紀、お前総理の孫娘、梓さんに手をだしただろ」


「はぁ?」


突然だされた名前に親父の言っていることがわからなくて、険しい顔のまま首をひねる。
 

手をたしたって今まで俺が抱いてきた女は、バーでお互いあと腐れない関係を望む一夜限りの女だけだ。

行為だけが目的だから、今まで抱いた女の顔など誰一人覚えてはいないしもちろん名前などお互いの素性など知りはしない。

「本当は尊にと思っていた縁談なんだがお前のことが気に入ってるらしくてな。
何度か接触してようやく一夜をともにしてもらえたから、初めての相手と生涯を添い遂げたいと言っているらしい。

身から出たさびだ。
責任をとって結婚しろ。

総理が目に入れても痛くないほど溺愛しているお孫さんだ。
遊びで手を出したなんてわかったら私も政界から抹殺されるし高宮総合病院も彼女の旅館もそれに晒名総合病院もただではすまないだろうな」

「くっっ!!
それは俺に結婚するという選択肢しか選べない脅しですか」

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