5月31日 朝の話

タバコとオーケストラ

ステレオのスイッチを入れキャビネットから1枚のCDを取り出した。

-ベートーベン交響曲第7番-


ドラマの主演を演じる為に何百回、何千回と聴いた曲だ。
素人の俺が本格的に指揮を振る。その姿が嘘になるのは絶対に避けたかった。
俳優としてのプライドがそうさせた。

今までクラシックには一切興味がなかったがあの役を演じてからたまにこうやって自宅で聴いたり車で聴いたりするようになった。

すると自然に指揮を振ってしまう。
そして口癖のようにオケを口笛で吹いてしまう。
オーケストラは歌のように言葉で表現できないから口笛になるのだ。

それは雑誌の取材中も例外ではなくいたるところで口笛を吹くのだ。
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