腹黒策士が夢見鳥を籠絡するまでの7日間【番外編② 2021.5.19 UP】


 その日の夕方、研究室に戻ると、
 例の女の子と須藤先生が話しているのが目に入ってきた。

―――なんで今……!

 見えないように身をひるがえし、
 思わず入り口の影に立ち尽くす。


「遅いし、早く帰りなさい」

 須藤先生が女の子に言った声が聞こえてきた。

 まるで私に言うような口調で。
 表情は見えないけど、いつもみたいに、私にするように優しく笑っているのだろう。

 それを想像すると、
 また胸がぎゅっとなる。


「え~せっかく先生の顔見に来たのにぃ」

 女の子の甘い声。
 耳をふさぎたくなった。でも、なぜだかできなかった。

……知りたくて。


「今度いくらでも見なさいね」

 須藤先生が言う。

 今度。
 いくらでも。

……それはやっぱり、そういうことか。


 私の胸が落胆に染まる。
 分かってたくせに、目の当たりにするとこんなに辛いなんて。

 知らなかった。



「いやよ。そんなの。今度なんて、いや」

 痴話げんかか?
 いちゃいちゃしているようにしか聞こえない。

「だめ。今日はもう帰りなさいって」

「わかったわよ……。じゃ、ばいばい」

 そう言って、女の子が驚くほどの速さで走り去る。
 私はただ、その場に立ち尽くしていた。



―――やっぱだめだ。


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