腹黒策士が夢見鳥を籠絡するまでの7日間【番外編② 2021.5.19 UP】
「……バカじゃないですけど」
「それ、詐欺だって」
「そんなわけありません。田中さんは私のことを大事に思ってくれています。仕事も真面目ですし」
須藤先生は何を言っているのだろう。
田中さんと会ったこともないくせに。
私は会った。10回も会っている。
先週は満を持して、ホテルまで行った。
「田中ってやつが仕事してるとこ見たことあるの?」
「デート中でも仕事の電話があります」
「その内容、聞いたことある?」
「仕事の内容なんで聞きません。どうも秘密裏な海外との契約を任されているとかで。先週はホテルの奥の部屋に入って長く話してました」
父もこちらにいる時は、よく国際電話をしている。
英語なので私には内容はよくわからないが、あまり人に聞かれてはいけないものらしく、共同研究をしている須藤先生と一緒に他の部屋にわざわざ行って電話していたりする。
つまりは、それと一緒だろう。
須藤先生はすっと表情を曇らせる。そして、低い声で、
「ホテルって……。まさか、もうヤったの?」
と聞いてきた。
私はいつもと違う須藤先生の空気を感じながら、しかし、言っている意味が分からなくて、
「はい?」
と首をかしげる。