狼男  無限自殺 編
第6話











「アタタタ・・!」


「オジサン無理しなくても大丈夫ですよ。」


「バーロ。まだまだひよっこのお前らに任せ・・アタタタ・・!」


僕達が“未成年”から“成人”になると同時に、オジサンや仲間の皆さんも歳を重ねる。


年々腰が悪くなっていくオジサンが、またギックリ腰を発症したので布団に寝かせる。



勇気を出して・・・
オジサンの力に、皆の力になりたくて、

頑張って自動車“学校”へと通って、
運転免許を取得して、

今では僕が軽トラを運転するようになった。




オジサン以外の仲間達は、年が経過する度に平均年齢70歳から上がっていく。


あの頃の・・
14歳だった自分をぶん殴りたいほど、

僕は初めて“死”がどういうものなのか思い知らされた。


寿命を迎えれば人は亡くなる。

それがどれほど悲しく・・儚く・・
涙が止まらないものか・・。


生きる術や農家としての誇りを教えてくれた仲間の皆さんは、

最期に僕達に“命の尊さ”を教えてくれた。


少し前までは元気に漬け物をおすそ分けしてくれた姿がもう無い。

当たり前のように繰り広げられた光景はもう二度と起きない。


1人・・また1人と精一杯生きた命が空へと還っていく。


・・消えていく命・・・

それと同じようにまた・・
生まれる命がある・・・。


・・・・・僕は今・・・




「・・フミヤ・・・。」


「アオイも寝てなよ。
つわりがひどいんだろ・・?」


「私やっぱり・・
“五味”になりたい・・・。」


「・・・・・・・・・・・。」


「オジちゃんも・・
良いって言ってくれたの・・。」


「僕は・・・男の子か女の子かまだ分からないけど・・

自分の子供が“ゴミ”呼ばわりされるのは絶対にイヤだ・・。」


「・・・・・。」


「・・・僕が婿養子になる・・・。」


「フミヤは一人っ子なんでしょ・・?
私はお兄ちゃんがいる・・。」


「・・・・・・・・・。」


「きっとお義父さんもお義母さんも、
フミヤには跡取りをって・・・・。」


「・・・・・・・・・・。」


「私・・“五味”の由来を調べたの・・。

仏様が[甘・辛・酸・苦・塩]
と称した味覚の事・・。

でもこれは・・
“味覚”だけじゃなくて・・

私とフミヤが経験してきた“感情”にも当てはまると思った・・。」


「・・・・・・・・・。」


「私はフミヤのおかげであの時飛び降りるのを躊躇できた・・。

フミヤのおかげでオジちゃんと再会できて・・生きる事が出来て・・。

色んな野菜を通して“五味”を知る事が出来て・・。」


「・・・・・・・・・・。」


「フミヤのおかげで“人を好きになる”気持ちを・・【恋情】を知れた・・。」


「・・・・・・・・・。」


「私達・・学力も無いまま大人になったけど・・

でも・・“五味”の素晴らしさと・・
“生きる事”の素晴らしさなら・・

きっと子供にもちゃんと伝えられると思う・・。

例え・・フミヤが苦しめられた心無い人達のような存在が・・

私達の事をなんて呼んだとしても・・私・・・。」




土がついた手を払うことも忘れ、
言葉を詰まらせたアオイを抱きしめた。


アオイ以上に・・僕が泣いていた。


きっと・・多分・・・アオイが僕の事を想ってくれている気持ち以上に・・

僕がアオイを愛しく想う気持ちのほうが勝っていた。



彼女のお腹に宿った新しい命。


その命が誕生する日に、
僕達も籍を入れると決めた。



“逃げれば勝ち”
“逃げればいい”


あの時はそうしたことで結果的に幸せを掴めたけど、もうその考えは捨てると決意した。


僕より身長が低くなったオジサンも、
平均年齢が上がっていく仲間達も、


この世で一番愛しく想う大切な存在も、
そこから生まれる新しい宝も、


“絶対に僕が守る”


たくさんのキャベツ達に囲まれながら、
決意を固めた。

























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