DIYで魔法世界を再建!
「いいかい、ユキちゃん
 良い土には、虫がいっぱい群がるんだ。虫にとって、土は生活の基礎だから、土が肥えていれ
 ば虫も繁殖する。だがな、栄養の無い土だと、虫が寄り付かない。
 ユキちゃんも、不味い飯を出す店より、上手い飯を出す店に行くだろ?」

あの時の記憶を辿れば、良い土は簡単に見つけられた。私は虫を触っても割と平気な方。生前、家にわんさか出現したし。妹は対処できないから、その度に私が活用されていた。
父方の祖父母は農家だった。だから家の野菜事情は、全て祖父母が賄っていたと言っても過言ではない。売り物に出せない野菜ほど、何故か美味しいのだ。
島は本土と比べて土地が少ない。でも、海からの栄養と大地の栄養をダブルで与えられた野菜や果物は、地元ブランドとしても人気が高い。
だから、修学旅行で県外に行った時、一番驚いたのが、『食べ物の味』だった。もちろん、県それぞれのご当地メニューは人気が高いし、美味しい事は確かだ。
ただ、不思議と『野菜』と『米』だけは、妙な違和感を感じた。調理法とか保存方法も絡んでいるとは思うけど、何故か・・・あまり舌に合わない気がする。
海外旅行に行くと日本料理が恋しくなる・・・という話はよく聞くけど、やっぱり生まれ育った場所で採れた野菜や果物の方が、『心が落ち着く』
他県の食べ物も、もちろん美味しい。それは否定しない。でも、やっぱり地元ブランドの方が、満足感が違う。安心する満足感だ。
まるで、我が家に帰って来た時の安心感が、食を通じて得られる様な、そんな感覚。そう思い始めると、生前が恋しくなってしまうけど・・・・。
でも、今の私にとっては、此処が『故郷』だ。此処で地元ブランド・・・みたいな食のレパートリーが広がれば、皆の活力にもなるし、もっともっと作物の種類は畑の規模を広げたいと思える。
国が成り立っていた頃、野菜などの食糧事情はどうだったのか、私はヌエちゃんやシナノ様に聞いてみた。
この国にも『農家』と呼べる職業があり、そうゆう人達が人々の食糧事情を賄っていた。ヌエちゃんの一族も、実はこの農家職の派生だったとか。
ただ、やっぱり魔力が枯渇すると、採れる野菜や魚の数も減り、質も当然下がってしまう。いつしか農家が辞めていき、同時に国の食糧事情が深刻化。
どんなに頑張って作物を増やそうとしても、基礎である土壌が成り立っていないと、当然成果がなかなか上がらない。いつしか、農作業は国に囚われた罪人の役目と化したんだとか。
それでどうにか食料を賄う人手問題は落着した。しかし、それでは何の解決にも至らない。結局罪人が収穫した作物でも、栄養価が低いから、焼け石に水。
だからヌエちゃんや迷い人が、この林で採れたキノコや木の実などを食べた際、涙が出る程喜んでくれたのだ。今では色々な作物が食べられるから、ヌエちゃん達はよくこんな言葉を口ずさんでいる。

「此処は『楽園(エデン)』だ。」

と。
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