DIYで魔法世界を再建!
第三十六章 不穏な悲鳴
「・・・あー、此処に落雷が落ちたんだー。」

「うわぁ・・・黒焦げの柱みたいですね・・・
 どうします?」

「倒木の危険性もあるから、切っておこう。まぁ多分私一人でも大丈夫だよ。ヌエちゃんは水路
 の拡張を進めておいて。
 この前の雨で、水路が塞がっている可能性もあるからね。」

落雷は、生前の世界でも問題視されていたけど、近衛界でもその脅威は健在だった。昨日の晩、林のあちこちに落雷が落ちた事は知っていた。
ただ、落雷が一体何処に落ちたのかは分からない。そもそも、この木々が立ち並ぶ林の中では、全ての木が『避雷針』になってしまう。だから、何処の木に落雷が落ちても不思議ではない。
教会の近くには木がないから問題はないけど、教会の屋根に付いている飾り物だけは、事前に取り外しておいた。火事になると、そこで全てがパーになってしまうから。
ただ、屋根に登るのは相当怖かった。高所恐怖症でもないんだけど、屋根にもだいぶ欠陥が見られたから、そこも後々考えないといけない。
「それくらい私がするぞ」とシナノ様は言ってくれたけど、神獣様を使いっ走りにするわけにもいかない。提案を断った途端、シナノ様は若干不機嫌になってしまったけど。
今日は皆が雨の処理に追われている。まぁ散策しながらだから、そこまで大変でもない。ただ、やっぱり雷の恐怖を目の当たりにしてしまうと、どうしても作業スピードが落ちてしまう。
落雷が直撃した木は、まるでチョコレートのオブジェに様になっていたけど、その周りには、焦げ臭い匂いが立ち込めていた。
肉が焦げた匂いにも似ているけど、それよりももっと濃い匂い。つい咳き込んでしまった私は、とっとと丸コゲになった木をバラす事に。
最初からボロボロだった事もあって、鉄斧で数回叩いただけで倒れてしまった。その断面からは、真っ黒になった虫達の死骸が詰まっている。思わず目を逸らしたくなる光景だ。
ヌエちゃんが見なくてよかった、彼女は虫が苦手だから。特に芋虫系が苦手みたいだ。ただ、その理由というのも、かなり凄まじい話。
シナノ様は小腹が減ると、そこら辺にいる虫を口にする。私も何度か見ているけど、その時の光景が・・・すごい『野蛮』
テレビだったら完全にモザイク必須な光景。そう考えると、虫やらグロ系を扱った番組のスタッフがどれだけ凄いのかが分かる。
私は、ホラーゲームなら何度かやっている。友人の家に行って嗜んだくらいだけど。ただ、グロ系はだいぶ・・・キツい。
そんな私も、シナノ様の捕食シーンは、『すごい』としか言えなくなる程語彙力を失う。だがシナノ様によると、『虫は美味しい』と言っていた。
生前の日本でも、確かに虫を食べる文化はあった。イナゴとか蜂の子とか。この世界でも食虫の文化がわずかながらあったと、住人の一人が呟いてたのを覚えている。
ただ、生きている虫を踊り食いできるのは、シナノ様くらいだろう。そんな光景を幼い頃から見ていたヌエちゃんがトラウマになってしまうのも、納得できる。
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