DIYで魔法世界を再建!
第五十章 漣ノ剣
「これは・・・この剣は・・・
 もしかして、あの精霊さんの・・・?」

「そうだ。
 あやつはユキナに全てを託すつもりで、自分の全身全霊をかけて、その剣へと生まれ変わっ
 た。しかも、この剣に宿った霊力は、あの精霊一体だけではない。
 多くの精霊達の霊力が、その剣に込められておる。古龍によって力の大半を失ってしまった精
 霊達の、僅かな霊力すらも無駄にはしなかった。」

転生者の私が持っている事自体が不謹慎なくらい、その剣は立派な形と性能を誇っていた。誰かに譲りたい気持ちもあるけど、そんな事したら精霊さん達が絶対に怒る。
剣術に関しては、この林に侵入してきた飢獣の退治でしか実績がない。人に刃物を向けた事もないし、況してやあんな凶悪な龍と闘うなんて、転生直前の私が知ったら、きっとひっくり返る。
でも、もう今から剣術を習う余裕もなさそうだ。私には何となく分かる、もうあの古龍が、私達の住む林を狙っている事が。
シーズさんの話が事実なら、古龍がこの林を狙う理由は十分にある。此処の魔力は、シーズの母にとっては、『人類の再建場所』でもなければ、『楽園(エデン)』でもない。
単なる『餌場』である。
シーズさんの母親に、悪い気持ちが全くないというわけではない。相手も『元』人間であった事に相違はないから。
ただ、いくら『元』人間であっても、価値観や生き方が全く違う。かつての女王様は、『自国』の為『国民』の為を思って、化け物に姿を変える決心をしたのかもしれない。
しかし今となっては、あの怪物は僅かな生き残りである人間達を絶滅へと追いやるだけの『敵』となってしまった。
魔力を追う性質が、例え女王様も不本意だったとしても、それが制御できないのであれば、尚更手を下さなくてはならない。
心が全く病まないわけでもない。ただ、こればっかりはどうしても避けられない。それでも、私と同じ条件で心を病んでくれる同志がいるだけでも幸いだ。
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