悪役(ヒロイン)だったはずですが、騎士団長様に愛でられて幸せな結婚します。
洋館に近づくと、怖いくらい男たちの声が聞こえてくる……だけどスタスタと二人が行ってしまうから私も必死に追いかけた。
「遅い、もう休憩は終わりだぞ」
「すみません、カルロ団長……遅くなりました」
カルロ……? その名前、聞き覚えがある……だけどどこで聞いたんだろう。それに私、さっきから“メアリ”って呼ばれてる。もしかして……のことが頭をよぎったが、いや、まさかねと頭を振った。
「メアリが珍しいな、頑張りすぎるんじゃないか?」
「……っ……」
カルロさんは私の頭をポンっと触れる。私は異性に触れられたことがなく、思わずドキドキしてしまう。
「カルロさんはメアリに相変わらず甘いですね〜」
「……は? 何を言っているんだお、お前は」
「だって、俺たちにはそんな労いの言葉なんてかけてくれないじゃないですか〜」
……この言葉、聞いたことある。あの小説のヒロインが騎士団に入隊して1年経った時の……。
「そうだ、あの件はどうなったんです? ギルバード様の親衛隊の話は……確かメアリも指名されていましたよね」
「……なんでお前が知っているんだ」
ギルバード様の親衛隊?
「聞こえちゃったんです、えへへ」
「聞こえちゃった、だと……本当にお前は口が軽い。いつか酷い目に遭うぞ。だが気配を消すことはうまいな」
「……すみません、ありがとうございます」
これ、本当に“小説”の中なのかもしれない。
「後でメアリは執務室に来るように」
だって、ここ読んだ記憶がある……ヒロインが幸せだと感じた時の序章だった気がする。