夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~
小四の椿は一瞬驚いていたけれど、あまりにもお祖父さんがくすぐってくるものだからはしゃぎ笑った。

それを見てほっと胸を撫で下ろす。いつの間にか張りつめていた空気がほどけたようで脱力した。

「またお前の母さんだろ?この長い髪は。三年前と同じだな」

呆れたようにため息をついてお祖父さんは言う。

「どうしてわかるの?」

お祖父さんと再会できた感動からなのか、弱々しく掠れていた声は、だんだんはっきりと誰の耳にも普通に聞こえてくるようになってきた。きっと何年ぶりかの安堵を感じているのだろう。

「そりゃ三年離れていても家族なのは変わらないからさ。じいちゃんには何でもお見通しなんだぞ」

お祖父さんはニシシと笑い、洗面所から散髪用ハサミをとりにいく。

「これって夢……なわけないか」

一人になった途端に静寂に包まれたメガネ屋のカウンター。そこに立ちながら指で頬をつまみ、椿は呟いた。それからふふっと微笑みを浮かべる。おそらく信じられないような出来事に興奮しているのだろう。

「もう一度だけ……いいよね?母さん」

その言葉がさらなる悲劇を呼ぶことになるなんて椿も私も思いもよらなかった。

視界は暗闇に閉ざされる。長い夢の中で幾度となく目にしてきた光景だ。さすがに違和感すら感じないくらい慣れっこになってしまった。

真っ暗なひとときは目にする度に私の気持ちを入れ替えさせ、場面までも転換させてくれる。それはまるでミュージカルを見ているようだ。
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