癒やしましょう。この針で!!~トリップしても根性で乗り切ります。
「そろそろ時間だろう。ロドスを弔うための、ラブラの用意は出来ているのか?」
ウィルの声にハッと我に返るルノアさん。
「準備は出来ているのですぐに始められます」
ラブラ?
聞き慣れない単語に、愛来は涙を手で拭いながら首を傾げた。
「ウィル……ラブラって?」
「ああ、ラブラは紙とロウソクで出来たランタンだ。ロウソクの炎の力で空高く上っていく。死者の魂をランタンに乗せ、天に戻るのを見守る儀式なんだ」
ウィルから説明を受けているとラブラに火をともしたルノアさんが愛来の手のひらにサラサラとした何かを手渡した。
そっと手を開くと……。
???
砂?
キラキラ輝いている。
「それは銀砂です。ラブラと一緒に空に撒いて下さい。」
これを空に撒くの?
リドもルノアさんから銀砂を手渡され握り絞めている。
「聖女様銀砂撒くの初めて?銀砂を撒くとキラキラ光って、すっごく綺麗なんだよ」
先ほどまで泣いていたリドが嬉しそうに教えてくれた。
「ルノア、風の魔法が必要だろう」
ウィルがパチンッと指を鳴らすとふわりと風邪が吹いてきた。その風に乗せルノアさんがラブラを空に向けて掲げると、星のひしめき合う空へと昇っていく。
リドが手に握り絞めていた銀砂を撒きながら叫んだ。
「おじいちゃん!!バイバイ!!」
ルノアも小さな声で「お父さん、ありがとう」と呟くように声を出し銀砂を撒いた。
愛来も二人を真似て、銀砂を握り絞めると「ロドスさん……安らかにお眠り下さい」そう言葉にした後、銀砂を夜空に撒いた。
キラキラ輝く銀砂とゆっくり空へと昇っていくラブラを見つめる愛来。
愛来の肩を抱き寄せたウィルも銀砂を撒くと、もう一度パチンッと指を鳴らす。すると風と共に砂の粒子が更にキラキラと輝きながらラブラを守る様に天へと昇っていった。
それは本当に幻想的で愛来はウィルの腕に体を預けたままラブラが見えなくなるまで眺めていた。