癒やしましょう。この針で!!~トリップしても根性で乗り切ります。
外には四つの月と星々が輝いている。忌々しい四つの月、あんなに幸せだったのに、こんなことになるなんて……胸が押しつぶされる。苦しくなる胸に手を当て、隣でスヤスヤと眠るウィルの顔を見つめた。明日のこの時間に私はこの世界にはいない。
お母さん、根性でどうにも出来ないことがあったよ。
私は日本に戻ったら何をしよう。鍼灸院でまた働いて……結婚はできないわね。ウィル以上の人なんて日本にはきっと……ううん、世界中探しても絶対にいない。ウィルには幸せになってなんて言っておきながら心がモヤモヤする。ウィルの隣に立つことのできる女性に嫉妬してしまう。
どうして、
どうしてウィルの隣にいるのが自分ではないのか。
きれいごとを言った。
この世界が守れるなんて最高だと……。
この世界が守れたって私にある未来は……地獄だ。
ウィルのいない世界でどうやって生きていけばいい。会えないあなたを思い続けて、泣いて、泣いてひたすら泣いて過ごす。
あなたに会いたいと叫んで、泣いて……。
何度も、何度もウィル……あなたの名前を呼ぶことだろう。
あなたの声が聴きたくて。
あなたの温もりを感じたくて。
あなたの笑顔が見てくて。
叫んで、叫んで……。
それでも届かない思い。
あなたに会いたくて、会いたくて恋焦がれて……。
夢の中でもいいからあなたに会いたいと眠り。
そして目が覚めたら、絶望してまた泣くんだ。
夢の中のあなたは私に笑いかけてくれるかしら?話しかけてくれるかしら?
そんな日々を過ごしていたら、きっと自分は壊れてしまう。
そう思った。
だから、ウィルには私を忘れてもらう。
私と同じ思いはしてほしくないから。
ガルド王にお願いした二つ目の願い、それは……
ウィルの記憶から私の記憶を消すこと。
いつまでも私のことを思っていてはいけない。ウィルはこの国を守り人々を導いていく人……。国の繁栄のためには妃を娶り、妃は子を産み……。
考えたくない、私以外の誰かがウィルに触れるなんて……耐えられない。
愛来は頭を振った。
それでも……。
この国でウィルが幸せに暮らせるのならば、それでいい。
私だけがあなたを覚えていればいい。
私を忘れないで……口から出そうになる言葉を必死に我慢する。
私を忘れないでなんて言えない。
愛来の瞳からボロボロと涙が止めどなく零れ落ちる。隣で眠るウィルを起こさないように嗚咽を我慢して。
ウィル大好きよ。
大好き。
愛してる。
私はあなたを忘れない。