やわらかな檻
「ため息ついてるよ、ここにしわが出来てる。……保健室、行く?」


 ここ、と言いながら少女は眉間に人差し指を添えた。
 ぎゅっと力を込めて皺を作っている。

 それが何とも可愛らしい。


「ううん、いいの。お嬢さん、お名前は?」


 少女も今まで走っていたのだろうか、薄い桃色に染まり上気した頬でこくりと頷く。

 それから、嬉しそうに胸を張って、子供らしいソプラノの声が響いた。


「さよって言うのよ」



 ――見つけた、理想通りの子。
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