やわらかな檻
 二・三人分の広さはあるソファに寝そべって、足を投げ出して彼女のいなくなった空白を埋め、しかし一向に本の世界へ入り込めない。

 彼女が来た日は考え事ばかりしてしまうのも、いつものことだ。


 彼女が真相に気付くのはいつだろう。
 
 もしかすると、聡明な彼女のことだから、もう既に気付いているのかもしれない。

 自分の遊び相手が、引きこもりではなく囚われの身であること。

 旧家の跡取り問題に巻き込まれ、存在自体をないものとされ、しきたりに唯々諾々と従っている籠の鳥であること。
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