いつでもキミが


「……寝たな…」

普通に寝た……
これ真純に話したら、『勇者が可哀想だ〜』ってわんわん泣き止まなかったんだけど、これで寝られるのさすがだわ……

…可哀想だって、思うよな。
すげー頑張ってんのに誰にも気づいてもらえなくて、何ももらえなくてさ……

そんなただの優しいやつが、傷つくべきじゃないだろ。
痛いの隠して笑わなくていいって…、もっと自分のために行動しろよって、思うだろ…。

俺はベッドに肘をつき、繭の顔を見つめた。

「……鞠…」

繭は寝言で姉の名前を呼んでいる。

「………ごめん…鞠……」

そう謝った繭の閉じた瞳から、一滴だけ涙が頬をつたった。

「……辛かったよな…」

彼女のことを考えると、俺まで苦しくなって涙が出そうになる。

流れた涙を拭きたいけど、繭のお父さんと約束したからには指一本も触れられない。

俺は肌に触れないように、ティッシュでそっと涙を拭いた。

周りから気づかれなくても、例え気づかれて可哀想だ哀れだと同情されたとしても……

俺は繭がそうするんなら、そうしたいと願うなら、止めないし同情もしない。

ただ、傷ついたときは手当てをする。
苦しくて涙が出てしまうときは涙を拭って。

彼女がいつだって自分の気持ちを隠さないでいられるように……ーー


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