いつでもキミが

ーーー紺野side


「よっ、はじめちゃーん!
懐かれてんねー?でらまゆちゃんに」

急に後ろから背中を平手で叩かれ、俺は眉間にシワを寄せた。

「……鬼畜先輩、おはよーございます」

「鬼畜先輩って…まだでらまゆちゃんにチューしようとしたこと根に持ってんのかよ…」

根に持ってるっていうか事実だし。
バスケ部でも大体鬼じゃん……

「本人は全く気づいてなかったっすけどね」

「そうだな…あれは鈍感という以前の問題だな。
……てゆうかお前、気持ち伝えないのか?せっかく仲良くなったんだし、でらまゆちゃんだって紺野のこと」

「あいつ好きなやついますから」

「は?好きなやつって…お前の幼なじみだろ?
しかも柳沼はでらまりちゃんと付き合ってんじゃん。いつの話してんの」

「…誰でも先輩みたいにすぐ切り替えられるわけじゃないんすよ。
それに…徹と俺じゃ、全然違う。そんぐらいわかります…俺だって」

嫌でもわかる。
徹のことを見つめる繭の目は、どっからどう見ても恋してる目だった。
徹のことを好きならそれでいい。
ただ、自分のことを諦めてほしくない。
自分のことがどうでもいいみたいな、無意識に自分を傷つけるあいつの姿は見たくない。

目を離したらすぐ自分を犠牲にしそうで、余計目が離せなくなる。

「そうかあ?ただそう思い込んでるだけなんでなーい?
う〜ん……一個だけ先輩から言うことがあるとするならば…、目で見えるものだけが全てじゃないよ。人の気持ちなんて目では見えないんだからさ」

「…………」

「けど…いいな、そうやって足掻いてる紺野。見てて楽しい」

「……せっかくいいこと言ったっぽいのに今ので台無し」

「うわっ、ほんと生意気で可愛くない後輩だなお前は」

「うっせーです」

少し笑いながらそう返事をすると、先輩もニヤリと笑った。
中学の頃からなぜか知らないが、俺を気にかけてきては焦る姿を見て楽しんでくるこの人が苦手ではあるがどこか尊敬もしている。と思う……

「まあ…足掻いて足掻いて足掻きまくるんだ青少年よ!」

そんなことを偉そうに叫びながら、先輩は3年の教室のほうへ歩いて行った。

「あんたもまだ青少年だろうが……」

それとも中身は爺さんか?


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