いつでもキミが


「紺野くんが小野寺さんの近くにいる理由がわかる気がするよ……ありがとう」

彼女は素敵な笑顔でそう言った。その大きな瞳は、光に反射してキラッと光る。潤んでいるんだ。
そんな顔を見てしまうと、どうしようもなくもどかしい。

初対面だけど悲しむ顔は見たくない。けど、彼女が悲しまない未来は、はじめちゃんが彼女と結ばれることだ。
そうなったら私は今までのようにはじめちゃんとは一緒にいられないのだろう。

…それは、嫌だ。そばにいたい。
あぁ…やっぱり私はもう、はじめちゃんから離れられなくなっている。

ごめん…ごめん……
私は心の中で、応援できないことに謝った。

「それじゃ」

そう言って彼女は自分の部屋のほうに戻っていく。
私は「うん」と気のない返事を返すだけで、それ以上何も言えなかった。ーー

ずるいなあ。汚いなあ、私は……

トボトボと自分も部屋に戻る廊下で、いろんな感情が渦を巻く。
今までずっと鞠だけのことを考えて生きてきたのに、今では自分のことばかりだ。

どこに行ってもモテてしまうはじめちゃんは何も悪くないのに勝手にモヤモヤして、はじめちゃんに片想いの人がいたことに苦しくなって、はじめちゃんに告白する子の応援もできない。

こんな汚い自分は初めてでどうしたらいいのか途方に暮れてしまう。
体を動かしたわりに、今日も眠れないだろうなと思った。


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