離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました


「そうだったんだ。知らなかった」

「来て真っ先に、達樹さん、私たちに謝罪させてくれって」

「え……?」

「仕事の事情とはいえ、入籍後すぐに一年も大切な娘さんに寂しい想いをさせてしまい本当に申し訳なかったって」


 母親は思い返すようにそう言うと、心底ホッとしたような微笑を浮かべる。


「みのりのこと、大切に想ってくれているのが伝わったわよ。お父さんも、これからもよろしくって」

「そう……でも、これからのことは、まだわからないよ」

「え? それは、やっぱり離婚という選択肢もあるっていうことなの?」


 追究されるとどう答えたらいいのかわからくなりそうで、「とにかく」と母親の声を遮る。


「なにか決断するときは、ちゃんと話すから」


 それだけを言って、レセプトの続きに取り掛かった。

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